ニュース2018.11.07

IR法制論 ~浮き彫りになった千里の道~

IR法制論 ~浮き彫りになった千里の道~

この程、政府は区域認定の時期を検討するため、年末までを目標にIR誘致に取り組む自治体の準備状況を調査することになった。この調査では自治体の意欲、体制、検討状況、準備工程などが対象になるため、自治体は区域整備計画をある程度具現化することが迫られている。

しかし整備法で明らかになった制度設計では、自治体が事業者と共同して国交大臣から受ける手続きと、事業者がカジノ管理委員会からカジノライセンスを受ける手続きが完全に独立しているため、自治体はライセンスが付与されるかどうかわからない事業者を想定して区域整備計画を起案しなければならないことになる。カジノオペレーターといってもその特色や運営手法は様々であり、事業計画の中でも収益予測や投資回収計画などの定量的要素は企業の経営方針によって大きな差異がある。自治体としては想定する区域整備計画と事業者の事業計画に乖離が出ることのないよう、この段階から選択をしなければならない。

一方でオペレーターの立場から見ると、希望する自治体が区域認定を受ける確証もないのに時間と費用をかけて、その土地において自社の特色を活用できるIRの開発計画と事業計画を立てなければならないことになる。IRは地域の潜在的特性を最大限引き出すことが要求されることを考えると、自治体とオペレーターの開発コンセプトが合致しないケースは十分にあり得るため、オペレーターは起案した事業計画を異なる自治体で使用し使い回すことはできない。

海外オペレーターの中には1兆円の投資を仄めかす事業者もいるが、IRの事業計画はこれから明らかになる実態に即して立案されるところ、何も指標がない状態で金額だけが独り歩きしている事例を散見する。投資規模だけでなく鉛筆を舐めて算出された経済効果の予測も今後はもっと精査されるべきである。自治体がIRを誘致する大義として地域の活性化を掲げる中において、オペレーターは自社と自治体がマッチする根拠となるような定性的な開発コンセプトを示さなければ区域認定の審査に耐えうる事業計画はできないのである。

IR開業までの道のりは長いだけでなく、幅も広いことが明るみになってきた。日本のIR市場は、オペレーターにとってカジノライセンスはもとより区域認定を受けるための障壁も高く、資金力や知名度だけで勝負する世界ではなさそうだ。

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